
ファクタリングと手形の違いとは?手形割引より有利な資金調達方法
売掛債権の早期回収という目的が同じ手形割引とファクタリング。
この両者の仕組みを混同してしまいますが、似て非なるものです。
ファクタリングの仕組みがいまいち・・・という方には手形と比べて説明することで分かってくるはずです。
そこで今回は似ているようで違う、ファクタリングと手形割引の違いについて詳しく解説します。
現在は、手形の流通量が減っていることと、電子手形の普及もあり「手形割引専門業者」は激減しているので、この記事では銀行で行う手形割引について話しを進めます。
ファクタリングと手形割引の仕組みを総まとめ
さてファクタリングと手形割引について簡単に説明しましたが、2つの資金調達方法の違いについてより詳しく見ていきましょう。
売掛金を譲渡するファクタリング
まずファクタリングは売掛金をファクタリング会社に譲渡することをいいます。
債権を譲渡するのですから、売った企業は支払いサイトの期日を待たずに資金を調達できるメリットがあります。
また、ファクタリングには取引先に通知をしなくても良い2社間ファクタリングと、取引先と企業、そしてファクタリング会社との3社間で行う3社間ファクタリングがあります。
ファクタリングは、手形割引と比べると不渡りの心配や返済の義務がないなどのメリットがあります。
手形を譲渡する手形割引
一方、手形割引は手形に記載されている期日前に、手形を担保にして銀行から融資を受けることをいいます。
「割引」とあるのは、期日より早く現金化するための手数料相当を割り引くという意味で、手形の額面そのまま融資を受けられるわけではありません。
手形割引は融資ですので、当然ですが銀行の審査があります。
手形を銀行へ持っていきさえすれば誰でも手形割引を利用して現金化できると思われがちですが、そうではありませんので注意が必要です。
徹底的比較!資金調達にかかる3つのポイント
ファクタリングと手形割引の違いを少しみてきましたが、ここでは以下の3つのポイントに絞って比較してみましょう。
返済義務の有無
1つ目のファクタリングと手形割引の違いは返済義務の有無です。
ファクタリングは売掛金を完全に譲渡しただけで、借入は行っていないのでもちろん支払義務はないです。
一方、手形割引は手形を担保にした融資です。そのため担保である手形の価値がなくなれば、企業は手形の額だけ返済の義務を負います。
不渡りリスクの有無<リコース・ノンリコース>
2つ目のファクタリングと手形割引の違いは不渡りリスクがあるかどうか。
リコースとは償還請求権があることをいい、ノンリコースとは償還請求権がないことをいいます。
ファクタリングと手形割引を比べると、ファクタリング会社の多くはノンリコース、つまり万一取引先が倒産し売掛債権が焦げ付いたとしても、ファクタリングを申し込んだ企業は返済義務を負わなくて済みます。
ただ、2社間ファクタリングを利用する際、ファクタリング会社との契約には、それがノンリコースであるのかどうかをきちんと確かめておく必要があります。
これに対して手形割引はリコースのある融資となります。手形割引は「手形を担保にした融資」ですので、取引先が倒産すると不渡り、つまり手形はただの紙切れになります。そうすると銀行は手のひらを返したように全額返還を求めてきます。
審査基準の違い
最後のファクタリングと手形割引の違いは審査基準です。
まず、手形割引は融資としての扱いですので、申し込んできた企業に返済能力があるのかどうかを審査します。
- 決算は赤字ではないか
- 税金の未払いはないか
- 債務超過ではないか
これらの点について慎重に調査します。万一、赤字決算や税金の未払いなどが発覚した場合は、残念ながら契約には至らないでしょう。
また、審査にかかる日数はだいたい平均で3日かかります。緊急性の高い資金調達の場面には向かないといえますね。
一方のファクタリングは、申込み企業の返済能力を審査することはほとんどありません。
なぜなら、ファクタリングはノンリコース(償還請求権がない)のため、万一債権が焦げ付いたりすると、損を被るのはファクタリング会社です。
そのため取引先が確実に支払いできるのかどうかの一点で審査をします。
審査は一般的には必要書類と面談となっていますが、ファクタリング会社によっては電話のみ、または書類を郵送するだけといったところもあります。
また、ファクタリングの最大のメリットは審査が早いということでしょう。少しでも早く資金を調達したい経営者にとって、最短即日で現金化ができるファクタリングのメリットは計り知れないものがあります。
手数料から見るメリットとデメリット
手形割引とファクタリングの違いを返済義務があるのかどうかという点でみてきましたが、ここからはそれぞれの手数料について、どちらがお得なのかをみていきましょう。
手形割引にかかる手数料
手形割引は銀行では融資の一種ですので、手数料は低く設定されています。大手銀行で1.5%~3%、地方銀行では2.0%~3.5%ほどです。
手数料は実際には割引料と呼ばれています。
また、取立料と呼ばれる手数料は、手形交換所に出す際の手数料で600円から1,000円発生します。この取立料は金融機関によって違いはありません。
このように、手数料だけをファクタリングと比べると、低く感じるかも知れません。
しかし手形割引は何度もいうようですが、「融資」です。万一焦げ付きが発生すると返済しなければなりませんので注意しましょう。
ファクタリングにかかる手数料
ファクタリングにかかる手数料は、2社間ファクタリングか3社間ファクタリングかによって違ってきます。
2社間ファクタリング・・・売掛債権の10%~30%
3社間ファクタリング・・・売掛債権の1%~5%
上記の手数料を目安にしておくと良いでしょう。
3社間ファクタリングは、ファクタリング会社、ファクタリングを申し込んだ企業、取引先という3社間で契約をします。そのため焦げ付きの心配がありませんので手数料は低く設定されています。
対して2社間ファクタリングのほうは手数料が高く設定されています。先述したようにファクタリングには手形割引と違って担保という概念がありません。万一取引先が倒産した場合は、ファクタリング会社がすべてを負うことになりますので、自ずと手数料は高く設定されます。
手数料だけで見るとファクタリングは高く感じられ、「手形割引を利用したほうがお得でははないのか」と思われがちです。しかし、手形割引は不渡りの心配をしていなければなりませんし、至急資金を調達したい経営者にとって審査が長いこともデメリットのひとつです。
表面的なお得感や手数料にとらわれず、安心してすばやく資金調達できるのはどちらなのかを見極めることが大切です。
最後に
手形割引とファクタリングの違いについて説明してきましたが、参考になりましたでしょうか。
ファクタリングも手形割引もメリット・デメリットをしっかり把握すれば、非常に合理的なシステムです。
違いを理解すれば、経営者の強力な助っ人となるでしょう。