日本大学 経済学部
三井秀俊 教授
外国為替FXと株式投資の違い

今回は日本大学経済学部教授の三井 秀俊(ミツイ ヒデトシ)教授にインタビューをしてきました。

三井教授は、経済学部の教授で株式投資を専門に研究をされています。

そんな三井教授に伺った話は、これから投資を始めようと考えている方が気になる「外国為替FXと株式投資の違い」です。

「FXと株式投資にはどんな特徴があるんだろう?」
「自分に合っている投資ってなんだろう?」

そんな疑問を抱えた方にピッタリ の内容になっています。

それでは早速ですが、取材内容を見ていきましょう!

FX:二国間の通貨を売り買いすることで差額の利益を得る取引。外国為替証拠金取引とも。

株式投資:企業が発行する株式を売買することで利益を出す取引。

取材にご協力頂いた方

日本大学経済学部教授 三井秀俊

東京都立大学助手、日本大学経済学部専任講師・助教授・准教授を経て、2015年より同大学経済学部教授。
この間、千葉大学大学院・一橋大学大学院・筑波大学大学院・上智大学大学院非常勤講師、
埼玉大学大学院客員准教授・客員教授、デューク大学客員研究員を歴任。博士(経済学)。
株式市場・デリバティブ市場・外国為替市場の計量分析を専門としています。
著書に『オプション価格の計量分析』, 『ARCH型モデルによる金融資産分析』(以上 税務経理協会)があります。

三井秀俊教授 ゼミページ

目次

FXと株式投資の違い①「取引可能な時間帯」

まず第一に三井教授が挙げられたのは「FXと株式投資の取引可能な時間帯が異なる点」です。

FXと株式投資両者の取引可能な時間は以下のようになっています。

FX24時間
株式投資前場9:00〜11:30
後場12:30〜15:00
※日本の株式市場の場合

FXはほぼ24時間いつでも取引できるのに対し、株式投資は市場が開いている時にしか取引することができません。

株式市場は前場と後場に分かれていて、それぞれ取引時間は2時間半ずつ。

FX取引と比較すると株式投資は制限されていると言えます。

FXと株式投資の違い②「投資スパン」

次に三井教授がおっしゃっていたのは、為替と株では投資スパンが違うということです。

投資スパンというのは、ポジションを保有している時間のことを指します。

為替では、スキャルピングという数分単位で新規注文と決済注文を繰り返す短期売買の取引手法があります。

他にもデイトレードなどが主流であり、極端に分かりやすいトレンドが出ていない限りポジションを長く持つことはあまりありません。

一方で、株式投資は中長期のトレンドが分かりやすく出るため、中長期投資が基本になります。

このように投資のスパンが違う点も両者の大きな違いと言えるでしょう。

FXと株式投資の違い③「投資対象の数」

続いて、三井教授が挙げられたのが投資対象の数です。

FX取引は銘柄数が多いと言われている業者でも最大で57銘柄の通貨ペアしか取引対象はありません。

株式投資を見てみると、市場と上場数は以下のようになっています。

市場上場企業数
プライム1,839社
スタンダード1,467社
グロース466社
合計3,772社

※2022年6月時点

上記はあくまで上場している企業の数ですが、これらの全てが投資対象になります。

株式投資では、企業の他にETFなども取引対象として存在するのです。

為替の投資対象銘柄数と比較すると、いかに株式投資の対象が豊富かが分かります。

もちろん投資対象が豊富が故に、投資先を選ぶのが難しいという難点もあるでしょう。

しかし、投資対象が多いということは、それだけ利益を出すチャンスがあるということでもあります。

このように投資対象の数も為替取引と株式投資の大きな違いの1つと言えるでしょう。

FXと株式投資の違い④「レバレッジ」

為替取引と株式投資の違いとして両者のレバレッジにも違いがあります。

レバレッジとは、てこの原理を表す英単語です。

レバレッジ取引は、自己資金を担保として証券会社からお金を借り、自己資金以上の取引をすることを指します。

自己資金以上の取引をすることから、「信用取引」とも呼ばれています。

FXと株式投資もレバレッジを使って自己資金以上の取引をすることができますが、そこにも違いがあるのです。

それはレバレッジ倍率の違いです。つまり、自己資金の何倍までのレバレッジをかけることができるか、ということ。

FXと株式投資ではそれぞれ以下のようになっています。

投資種類レバレッジ
FX25倍
※日本のFX業者の場合
株式投資3.3倍

両者のレバレッジ倍率には差がありますね。

なぜこのようにレバレッジに差が生まれるのでしょうか。

それは、為替と株式では投資対象の値動きが違うためです。

実際にFX取引のドル円、株式の指数である日経平均、個別銘柄の代表としてトヨタ自動車、メルカリの1年間(2021年6月1日〜2022年5月23日)の値動きを見てみましょう。

こちらで利用するチャートは全てTradingviewから引用しています。

まずはFXのドル円のチャートです。

ドル円の1年間の値動きは高値が131.347円、安値が108.722円です。

それらを計算すると値動きの幅は最大で17.22%ということになります。

続いて、日経平均のチャートを見てみましょう。

日経平均はこの1年間で高値30795.78円、安値24681.74円をつけています。

値動きの幅は最大で19.85%です。

これを見るとそんなに値動きは変わらないと思われるでしょう。

それでは次に個別株式を見ていきましょう。まずはトヨタ自動車のチャートです。

トヨタ自動車は1年間で高値2475円、安値1773円でした。

この値動きの幅は28.36%です。

日本を代表する企業でも30%近くの値動きがあるということになります。

続いて、値動きが激しいと言われるグロース市場の代表格であるメルカリのチャートを見ていきます。

メルカリは1年間で高値7390円、安値1948円でした。

この値動きの幅は実に73.64%です。

上記の1年間の変動率をを表にまとめたものがこちらです。

ドル円17.22%
日経平均19.85%
トヨタ自動車28.36%
メルカリ73.64%

ドル円と日経平均に関してはこの1年間はそこまで差は見られませんでした。

しかし、日本を代表する企業であるトヨタ自動車でも30%近い値動きがあります。

また、グロース市場の代表格であるメルカリに関しては73%と非常に大きな値動きが見られました。

このように為替と株式では、値動きに差があるため利用できるレバレッジ倍率にも差があるのです。

FXと株式投資の違い⑤「資産形成」

三井教授のお話の中に「株式投資のポジションは資産になるが、FX投資のポジションは資産にはならない場合が多い」というとても興味深いものがありました。

FXはあくまで通貨同士の交換レートであり、資産にはならないということです。

またFX取引は、基本的にはレバレッジを使うため保有しているポジションを自分の資産だと言うには無理があります。

一方で、株式投資は現物取引が主流であり、株式を持っているということは企業の一部を保有していることになるため明確に資産と呼ぶことができるとのことでした。

FXと株式投資にはこのような違いもあるのですね。

FXと株式投資の違い⑥「ファンダメンタルズで見るべき指標」

FXと株式投資、それぞれの取引手法に関する違いです。

三井教授は「テクニカル手法は同じだが、ファンダメンタルズ分析で見るべき指標は違う」と話します。

FXと株式投資どちらでも移動平均線やMACD、RSI、ボリンジャーバンドなどはトレンドを見る指標として有効とのことです。

しかしファンダメンタルズに関しては、FXと株式投資で見るものが異なります。

FX取引雇用統計やGDP、政策金利
株式投資個別企業の業績、政策金利

FXでも株式投資でも政策金利を見るのは変わりませんが、FX取引で重要なのは米国の雇用統計やGDPなど景気を表す指標です。

株式投資に関しては、特に重要なのは個別企業の決算などで業績を見ること。

両者にはこのような違いがあります。

FXと株式投資の違い⑦「分散投資」

少々難しい点になりますが、FXと株式投資の違いとして三井教授が挙げられていたものに「分散投資」があります。

分散投資はリスクヘッジの手法として株式投資において使われています。

具体的には、違う値動きをする複数の銘柄に分散投資をして投資成績を安定させるという手法です。

株式投資の場合、様々な会社があるのでその業種を分けることでヘッジすることができます。

一方でFX取引は複数の通貨ペアを持ってもヘッジにはならず、分散投資が非常にしづらくなっています。

こちらもFXと株式投資の違いと言えるでしょう。

FXを検討してものはどんな人?

FX取引はどんな人におすすめなのか、三井教授に伺ったところ「昼間仕事をしている方には良いと思う」とのお話がありました。

というのも、株式投資は9時から15時までしか取引できる時間がなく、日中仕事をしている場合は取引がなかなかできません。

その一方でFXであればほぼ24時間取引ができます。

さらに、FX取引が最も盛んになるのがロンドン時間とニューヨーク時間が重なる22時頃〜0時頃です。

この時間であれば日中働いている方でも取引ができるので、FX取引を検討しても良いと言えます。

ご自分がいつ取引できるのか、取引時間をしっかり決めてFX・株式投資どちらかを選択してみてはいかがでしょうか。

まとめ

今回は日本大学経済学部の三井秀俊教授に「FXと株式投資の違い」についてお話を伺いました。

今回伺ったFXと株式投資の違いは以下の7点です。

  • FXは24時間取引が可能だが株式は限られている
  • 投資スパンはFXの方が短い
  • FXは投資対象が少なく、株式投資は多い
  • FXの方がレバレッジが高く、株式投資は低い
  • 株式は資産になるがFXのポジションは資産とは言えない
  • ファンダメンタルズ分析で見る指標は異なる
  • 株式投資の方がポジションのヘッジがしやすい

このFXと株式投資の違いが、読者の方の選択の助けになれば幸いです。

(取材・執筆・編集/エモーショナルリンク合同会社)

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