昨今老後の資金問題などで注目を集めるようになった「投資」。
株式投資や外国為替FX、仮想通貨、貴金属やエネルギーなど投資対象には様々な種類があります。
また、投資の仕方にも複数あり、有名なところで言うと現物と先物がありますね。
今回はその先物取引について金沢大学の松本准教授に伺いました。
投資に興味があるけど「先物」についてはよく分かっていないという方には必見の内容になっています。
それではインタビュー内容をご覧ください。
取材にご協力頂いた方
金沢大学融合学域准教授 松本拓史
東京大学工学部卒業、マサチューセッツ工科大学大学院修士課程修了(MS in Technology and Policy)、筑波大学大学院博士課程修了(博士(経営学))。
中央官庁、株式会社三菱総合研究所、一般財団法人電力中央研究所を経て現職。
論文に”Simultaneous hedging strategy for price and volume risks in electricity businesses using energy and weather derivatives” Energy Economics 95、2021年(共著)、”Pricing electricity day-ahead cap futures with multifactor skew-t densities” Quantitative Finance 22、2022年(共 著)などがある。
先物取引とは?デリバティブって何?
EL:ズバリ、先物とはなんでしょうか?
松本准教授:何らかの商品を将来のある時点で受け渡すことについて、現時点で決められた価格で契約する取引のことです。
リスクヘッジの手段として利用されることが多いです。ちなみに、先物は、オプションやスワップなどとともに、デリバティブ(金融派生商品)の一種に位置付けられています。
デリバティブは、基礎となる商品等(原資産)の価格に依存して理論価格が決まるような金融商品で、用いられる原資産にも様々なものがあります。
EL:なるほど、先物はデリバティブの一種なのですね。それでは先物やデリバティブの原資産にはどのような種類があるのでしょうか?
松本准教授:株式、金利、為替、金、原油、電力など、非常に多くの種類があります。
例えば航空会社は、原油のデリバティブ取引や先物為替予約をして、将来の燃料価格の変動リスクに備えていたりします。
その他にも電力会社などが活用する天候デリバティブというものもあります。これは、最終的なペイオフ、つまり満期の価値が将来の天候の観測値に依存するようにして作られた金融商品です。
電力需要などは気温と強く相関するので、例えば気温を原資産に持つデリバティブを予め取引しておけば、将来の需要変動リスクなどを効率的にヘッジできるわけです。
EL:色々な種類があるのですね。確かに天候は不確定要素になるので事業会社としてはヘッジしておきたいですよね。ちなみに、今更ですがなぜ先物を使うとヘッジができるのでしょうか?
松本准教授:それは、将来の価格変動リスクに備えることができるためです。
例えば原油価格は現在より3ヶ月後の方が値上がりしてる可能性がありますよね。
先物取引なら3ヶ月後に値上がりしていても値下がりしていても固定の価格で取引することができるので、価格変動のリスクヘッジになるということです。
EL:そういうことですね。ちなみに、その3ヶ月後など先物には期日があるかと思います。先物取引において様々な期日が用意されている理由をお聞きしてもよろしいでしょうか。
松本准教授:事業会社などのヘッジャーにとっては、将来の現物取引タイミングがある程度想定されていて、その時点での現物価格をヘッジするために先物取引が利用されます。
期日を明確に定めることで、そのようなヘッジニーズを満たすことができるわけですね。そして、ヘッジャーにとって、ヘッジしたい将来の時点は様々です。
そのために、通常は期日までの期間が複数用意されています。限月は1か月おきや3か月おきに数年先まで設定されることが多いです。
一般的には、期近(早く最終取引日となる限月)の商品ほど、流動性が高い(取引量が多い)ため、取引しやすい傾向がありますね。
EL:たしかに、ヘッジする側としては複数の期日から選択できた方が良いですよね。何に対して、どの程度ヘッジするのかによっても戦略は変わってきそうです。
先物は一般の投資家にもおすすめできる?
EL:松本先生から見て、先物取引は一般の投資家におすすめできるものなのでしょうか?
松本准教授:多くの個人投資家にとっては、あまりおすすめできるものではないかもしれません。
というのも、先物やオプション取引は、本来的には事業会社などがヘッジ目的で利用するためのものだからです。もちろん、ヘッジファンド等の金融機関が、リスクの引き受け手としての役割を担いつつ、投機目的で取引することもあります。
個人投資家にとっては、どちらかというと前者、つまりヘッジ目的での利用の方があり得そうです。例えばですが、個別銘柄の成長性に確信をもっている投資家が、市場に連動する株価下落リスクをヘッジするために、(現物の個別株を保有すると同時に)日経平均先物を売り建てておくなどの活用方法は理にかなっていると思います。
EL:なるほど、つまり一般の投資家でもリスクヘッジとして利用する分には有用性があるということですね。
松本准教授:そうですね。一方で、投機の目的で個人投資家が参入することも、もちろん不可能ではないですが、少し分が悪いように思います。
ヘッジファンドなどの投機筋は、高度な金融工学的知識や、巨額のシステム投資を武器に戦っているので、個人投資家がそのような相手に勝つことは相当ハードルが高くなると思います。
もちろん先物取引の投機で勝てる方もいるとは思うので断言はできませんが、市場参加者の中で不利であることは間違いないかと思います。
EL:そうですよね。個人投資家が多く参加している市場で戦った方が勝率は上がると思います。先物について詳しく教えていただきありがとうございました!
まとめ
今回は金沢大学の松本准教授に先物取引について伺うことができました。
先物取引の存在は知っていても、いまいち内容や使い方がよく分かっていない方は多いのではないでしょうか。
先物取引はリスクヘッジの手法としてよく利用されていることがわかりました。
分散投資のストラテジーを組んでいる方は、ポジションと逆相関する投資対象の先物を売買することでヘッジをすることができますね。
必ず勝ちに繋がる投資行為ではありませんが、パフォーマンスを安定させることができるかもしれません。
ぜひ先物取引を実践してみてはいかがでしょうか。
(取材・執筆・編集/エモーショナルリンク合同会社)