流通科学大学商学部
上田義朗 教授
発展途上国への株式投資は長期投資がおすすめ?

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さまざまな投資があるなかで、株式投資は非常に有名かつ利用されている投資といえるでしょう。

しかしひとくちに株式投資といっても、その種類は実にさまざまです。昨今よくきく積立NISAも株式投資の1つですし、また日本だけでなく米国をはじめとした欧米株など、投資対象は非常にバラエティ豊かです。

その中でも特に今回注目したのが新興国や発展途上国への株式投資です。国が成長すればそれだけ多くのリターンが得られると考えられますが、本当にそうなのでしょうか。

今回の取材では、ベトナム経済をはじめとして外国への株式投資に詳しい流通科学大学の上田義朗教授に発展途上国への投資は成功するのかや、どのような方針で投資をするのがおすすめなのかについて聞いてきました。

外国への株式投資に興味のある方だけでなく、株式投資で重要になる基礎的な考え方について知りたい方も参考にしてみてください。

それではみていきましょう。

取材にご協力頂いた方

通科学大学商学部 教授
上田 義(うえだ よしあき)

神戸大学大学院経営学研究科博士課程を経て、ベトナム・ラオスJICA専門家、中小企業大学校講師、日本証券経済研究所研究員として活動。その後、流通科学大学助教授に就任し、現在に至る。日本ベトナム経済交流センター副理事長、大阪商工会議所国際ビジネス委員会委員、アジア経営学会会長などを歴任。

目次

はじめに

エモーショナルリンク合同会社編集部(以下EL):この度は取材をお受けいただき誠にありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。

上田教授:こちらこそよろしくお願いします。ベトナムをはじめとした新興国や発展途上国の経済をみてきたので、その経験から株式投資を交えてお話しできればと思います。

EL:ぜひよろしくお願いします。新興国や発展途上国は経済の動きが激しいこともあり、その国の株式を保有していれば儲かるイメージがあるのですが、そこを理論的にお話しいただきたいです!

上田教授:わかりました。それではまずはじめに具体的なイメージを持つために日本の過去データから経済がどのように成長しているかみていきましょう。

日本の過去データからみる国の成長の仕方とは?

上田教授:今回取材を受けるにあたり、過去およそ70年間における日本の日経平均株価のデータが掲載されている画像を準備しました。

日経平均株価で見るのは、日本の経済成長とおおよそ連動しているためです。それではまずデータをみていただきましょう。

上田教授:ざっくりみると日本は右肩上がりに経済成長していることがわかると思います。

もちろん途中途中で「バブル崩壊」やアジア通貨危機・リーマンショックなど、大きく株価が落ちている期間がありますが、ならして見るとやはり右肩上がりの成長線になります。

EL:確かに日本は経済成長できていないと聞くこともありますが、このように長い期間のデータで見ると成長していることがわかりますね。

具体的には、ここからさらにどのようなことがわかるのでしょうか?

上田教授:例えば1950年すぎに日本では、当時ソ連の最高指導者スターリンの死亡によって株価が暴落した「スターリン暴落」が起こりました。

しかし長期のデータ画像で見ると、何の変動もないかのように見えますよね。

これらが意味するのは、当時は大ニュースになるほどの暴落でも長期のデータでみれば些細な変動でしかないということです。

さすがにバブル崩壊やリーマンショックなどは大きな下落を表していますが、これもあくまで通過点でその後に経済成長していることがわかるかと思います。

EL:なるほど、確かに暴落に直面した投資家は絶望するでしょうが、このように長期データで見ると些細なことだったりもするんですね。

上田教授:その通りです。そしてここからわかるのは、今後の経済成長が持続して期待できる国への投資は「長期投資」が効果的ということです。

確かに暴落が起きてしまうことは十分想定されますが、日本の過去データからわかるとおり、その後の回復もあり、基本的に経済成長と共に株価は上昇するように動いていきます。

特に経済成長率の高い国は、この回復の時間が短いです。先に述べた「スターリン暴落」もすぐに回復しました。

EL:なるほど、過去のデータを参考にみてみると確かに長期投資が良いのはわかります。

ここでいう上田教授の「長期投資」とは具体的にどのような期間、株式を保有していることになるのでしょうか?

上田教授:投資家によって短期・長期の認識は異なるでしょうが、新興国や発展途上国への投資で長期保有するなら、その株式を保有していたのを忘れるくらい長い期間に渡って保有しているのが理想かもしれません。配当金を再投資する保有形態が理想ですね。

ここまでが新興国や発展途上国へ投資する際に頭に入れておきたい知識です。

それでは具体的にどのように投資戦略を立てるのかについてお話ししていきましょう。

新興国や発展途上国へ投資する際におすすめの投資戦略とは?

上田教授:投資戦略は個人個人で考えが変わるので、自分にあった戦略を選択するのが一番ですが、その戦略を立てる際に考えておきたいポイントをお話ししますね。

そのポイントとは主に2つです。

1つは「どのような投資スタイルで運用するのか」です。

上記で新興国・発展途上国への投資は長期投資が有効とお話ししましたが、人によってはずっと保有株式を寝かしているのはつまらないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

株価変動に応じて売買することが投資の醍醐味と思われる方もおられるでしょう。こういう方は短期投資ですよね。

あくまでイメージですが、短期投資は目の前の獲物に集中している「狩猟民族」、長期投資は長くゆっくり育てていく「農耕民族」と私は思っています。自分がどちらの属性なのか考えて投資スタイルを決定させても良いかもしれませんね。

EL:面白い例えですね。自分は多分狩猟民族なので、短期投資型だと思います。

新興国や発展途上国への投資には向かないかもしれないですね…。

上田教授:新興国・発展途上国に対して短期投資をするのが面白いと考える方もいるので、投資スタイルの1つとして実行してみるのも良いかもしれないですね。

ただし短期投資では、どうしてもどこでポジションを決済するかの出口戦略が難しいので、そこはしっかり考えておいた方が良いでしょう。外国株式でも「罫線分析」で売買を判断される方がおられます。それは良いのですが、外国株式の情報量が日本株に比較して制約されていることにも留意が必要です。

また、投資で考えておきたいポイント2つ目は「株式の選定」です。これは個別銘柄でも投資信託でも基本的には同様です。

具体的に述べると、株の種類には「成長株」と「資産株」という種類があります。

成長株とは「業績がよく、かつ株価が高く評価されており、さらに成長が見込める株式」のことを指します。

一方の資産株とは「利益成長力や資産価値などに対して現在の株価が正当な評価ではなく、投資家がその企業の価値を正しく評価すれば適正水準まで株価が上昇すると思われる株式」を指します。

以上のことから、投資戦略には4種類あるといえます。下記の図のように、「長期投資×成長株」「長期投資×資産株」「短期投資×成長株」「短期投資×資産株」、いずれかの投資戦略を選択すると良いでしょう。

また私個人では、長期投資をおすすめしています。特に国の成長に比例するように成長する電力会社や銀行の株は早いうちに買っておいて、長期で運用すると良いかもしれません。

忘れた頃に2〜3倍くらい株価が上がっているなんてこともよくあります。注意することは、投資戦略は複数を組み合わせても良いのですが、それぞれの戦略はブレてはいけません。戦略は首尾一貫するのが鉄則です。

EL:なるほど、分かりやすくありがとうございます。4つの投資戦略のどれが自分にとって運用しやすいのかだったり、これからの成長が見込まれる国で買うべき株がなんとなく見えてきた気がします。

しかし国の成長に合わせて株式投資を考えるのであれば、今の日本を対象に投資戦略は立てやすいのでしょうか?

上田教授:日本の経済はある程度成熟しており、ここから新興国並の成長ができるかどうかは見通しが難しいでしょう。

日本の経済状況や外交によっても大きく左右されますし、昨今だと世界のお金が日本に集まってしまい、投資ではなく投機のような形になってしまっています。

必ずしも失敗するとは言えませんが、投資はやはり国や企業の成長を予想してポジションをし、利益を出すモデルなので成長が見込みづらい国や企業に投資するのはあまり良いとはいえないでしょう。

EL:大変ためになるお話し、誠にありがとうございました。

(取材・執筆・編集/エモーショナルリンク合同会社)

この記事を書いた人

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