みなさんは「デジタル競争力」という言葉を聞いたことがありますか?
デジタル化が進む現代の社会において、時代の流れに対応するべく、世界の国々は様々な取り組みを実践している最中です。
日本でも、最近では「DX」というワードをよく聞きますよね。
さらに、近年はコロナウイルスの流行によってますますデジタル化が進んでいるのは、皆さんもご存じでしょう。
日本だけでなく世界にも目を向けて、デジタル競争力の現状や実際の取り組み事例などを見てみましょう。
そもそもデジタル競争力とはどんなもの?
はじめに、デジタル競争力とはどんな指標なのか説明します。
デジタル競争力は、政府や企業がどれだけデジタル技術の活用に取り組んできたかを示すもので、具体的には「知識」「技術」「将来の準備」の3項目に沿って評価されます。
これら3項目の細かい内容は、後ほど紹介しますね。
また、デジタル競争力のランキングはスイスのIMD(International Institute for Management Development)によって毎年発表されます。
デジタル競争力とは、国ごとのデジタル化への取り組みがいくつかの指標によって総合的に評価されたものだと覚えておきましょう。
日本のデジタル競争力はどのように推移している?
まずはじめに、日本のデジタル競争力を見てみましょう。
日本は先進国だし、10位以内には入っているのでは?
このように考えた方も多いのではないでしょうか。
しかし、日本は2021年のデジタル競争力ランキングでは、64カ国・地域のうち28位。
決して高い順位と言えないだけでなく、なんと過去最低順位となってしまいました。
日本でもデジタル化は急速に進んでいる最中ですが、世界の国々と比べると後れをとってしまっているのです。
2021年の順位だけでなく、これまでの順位の推移はどのようになっているのか、下のグラフをご覧ください。
このグラフからも、日本のデジタル競争力ランキングは2018年から下がり続けていることがわかります。
日本はデジタル分野に関しては、未だ先進国とは言えない現状にあるのです。
日本のデジタル競争力はなぜ低いのか
日本の競争力の低さはどこに起因しているのでしょうか。
先述の通り、デジタル競争力ランキングは「知識」「技術」「将来の準備」の3項目に沿って評価されます。
「知識」の項目は3つのサブ因子に分けられており、「人材」「教育と訓練」「科学的集積」でそれぞれ順位がつけられます。
その中でも、日本は「人材」のサブ因子は47位とかなり低く、国際経験に乏しい人材や、デジタル技術のスキルが他国と比べて低い人材が多いことが結果に表れています。
「技術」の項目は「規制の枠組み」「資本」「技術的枠組み」の3つのサブ因子にわかれています。
この中で、日本は「規制の枠組み」で48位と低い結果になっていて、スタートアップのビジネスがしにくい環境であることを意味しています。
反対に、「技術の枠組み」は8位と、比較的高い順位に位置づけられています。
「将来の準備」の項目においては、「順応性」「ビジネスの俊敏性」「IT統合」の3つのサブ因子に分かれており、その中でも「ビジネスの俊敏性」は53位。
日本ではビッグデータの活用ができていない上に、意思決定のスピードが遅いのです。
64カ国・地域中53位なので、「ビジネスの俊敏性」でかなり足を引っ張っていることがわかります。
このように、日本はデジタル技術のスキルを持つ人材が少なかったり、ビッグデータの活用がまだまだであることから、64カ国・地域中28位と先進国であるにも関わらず高くない順位でくすぶっているのです。
コロナ禍における各国の取り組みを紹介!
2021年も引き続き世界各国はコロナウイルスの渦中にありました。
そんな中で、早急なデジタル化を余儀なくされたことも少なくなかったと思います。
それでは、コロナ禍において世界の国々がどのようなデジタル化の取り組みを行ってきたのでしょうか。
日本ではコロナ禍においてもデジタル化が遅れていると言われることが多かったですが、世界では刻一刻とデジタル化が進んでいます。
日本でもいつか、これから紹介するような取り組みが導入されるかもしれませんね。
今回は、アメリカ、中国、シンガポール、ルワンダの事例を紹介していきましょう。
アメリカの小売業におけるデジタル化導入事例!
アメリカは2018年から世界デジタル競争力ランキング1位を獲り続けています。
コロナ禍においては、コンタクトレスを目指すデジタル導入がさらに促進されていきました。
常に世界を引っ張っているアメリカでは、どのようなデジタル活用が進んでいるのでしょうか。
具体的な実例を2つ紹介していきます。
ロボットデリバリー
引用:https://robotstart.info/2018/05/01/starship-technologies-1000.html
コロナの影響もあって、アメリカではロボットデリバリーが人気になりました。
ホテル内のロボットデリバリーなどではなく、ロボットが単独で公道を通って各家に配達しているのです。
一部の都市では、法律でロボットが「歩行者」として指定されています。
特に大学などでは積極的にロボットデリバリーが採用されていて、非接触型の有効的なサービスになっています。
ここ最近、日本でも「置き配」はかなりメジャーになってきましたが、ロボットデリバリーは未だ普及していませんよね。
近い将来は、世界各国でロボットデリバリーが普及しているかもしれません。
Amazon go コンビニ
続いて紹介するのは、「Amazon goコンビニ」です。
Amazon goコンビニは、商品をお店の外に持ち出すと自動的に決済される仕組みになっている無人コンビニのこと。
最新のIT技術を導入したコンビニで、コロナ禍の社会においてさらに注目されました。
コンビニに入ってアプリのQRコードをスキャンすると、その後は手ぶらでショッピングを楽しめます。さらに、店内の至るところにセンサーのようなものが設置し、来店者の全行動を把握しているためわざわざレジにも並ぶことなく店内を出るだけで決済がされる仕組みになっているのです。
まさに、最新のIT技術を活用した画期的な事例ですよね。
今後はアメリカ以外の国にも、手ぶらでレジに並ばずに買い物ができるコンビニが広まっていくかもしれません。
中国は医療業界でデジタル導入を進める
まさにIT化が進む真っ只中で、2017年からデジタル競争力ランキングで順位を上げ続けている中国。
コロナ禍においては、医療業界でデジタル導入が進みました。
ここでは、その中の一例である「インターネット病院」を紹介します。
インターネット病院
インターネット病院は、オンライン診療を提供するシステムであり、コロナウイルスの影響で急速に普及してきました。
具体的には、最新のAI技術を使ったAI医師プラットフォームを使って、なんと35の診療科、6000種類以上の疾患をカバーしていたり、アシストロボットが医師と患者の会話を認識して電子カルテを作ったりしています。
デジタル競争力の順位がここ数年で上昇し続けている中国のIT活用は、これからも注目していきたいところです。
シンガポールでは観光業でデジタル導入!コロナ禍への対応策とは
シンガポールは、2021年のデジタル競争力ランキングで5位にランクイン。
アジア圏内ではかなり上位のデジタル競争力を持つシンガポールでは、どのようなデジタル技術が導入されているのでしょうか。
今回は、観光施設であるGardens by the Bayでの事例を紹介していきます。
観光施設でのニューノーマルを目指す取り組み
Gardens by the Bayは公式アプリをリニューアルし、オンライン上で人気アトラクションのチケットを購入できる機能を搭載しました。
さらに、GRSと連動して混雑状況も可視化できるようにしたことで、利用者が密になることを防ぐことができます。
これらの取り組みは、アフターコロナの時代になっても利用者にとってありがたいサービスですよね。
常に高い順位を取り続けているシンガポールのデジタル導入事例は、今後も注目されていくことでしょう。
アフリカの国でも進むIT化!先進ITを使って社会課題を解決
続いては、アフリカの国におけるデジタル活用の事例を紹介しましょう。
しかし、アフリカではまだまだインターネットが普及していないし、デジタルを活用できる段階にないのでは?
と考える方も多いのではないでしょうか。
事実として、アフリカ全体のインターネット普及率は30%ほどですが、そんな中でも様々な国でデジタルが導入されつつあるのです。
今回は、東アフリカの小国であるルワンダにおけるデジタル導入事例を紹介していきます。
ルワンダではドローンの活用が命を救う
ルワンダは、アフリカの国々の中でもIT分野で成長し続けている国のひとつです。
ルワンダにあるスタートアップ企業のZipline社は、超高速ドローンによる医薬品配送を可能にしました。
このドローンを使って、輸血用の血液、ワクチン、医療器材、そして、コロナ禍の現代では新型コロナウイルスの検査サンプルなどを運んでいます。
もともと、ルワンダでは平地が少なく傾斜地が多いことから、輸送網における課題が生じていました。
道路が整備されていない地域では、血液を運ぶ際もかなりの時間がかかってしまいます。
こうした課題を解決するべく、発明されたのが超高速ドローンというわけです。
従来は、ある病院で血液が足りなくなるとルワンダの首都であるキガリまで車で往復2時間もかけて血液を入手していました。
それが、超高速ドローンを使って運べるようになったことで、なんと8分で届くようになったのです。
現在は、新型コロナウイルスの検査サンプルを運んでおり、コロナ禍においても超高速ドローンが大活躍。
このように、ルワンダの上空を移動する超高速ドローンは移動時間を短縮しただけではなく、多くの人の命を救っているのです。
今回は、デジタル競争力ランキング1位のアメリカ、近年順位が急上昇している中国、アジア圏で常に上位のシンガポール、そして、まさにIT分野が成長し続けているルワンダのデジタル活用事例を紹介しました。
どの国の事例も大変画期的で、これからの技術発展がますます楽しみになりましたね。
今後の日本はどうあるべきか
本記事では、2021年に発表されたデジタル競争力ランキングをもとに、日本の順位から現状を読み取ったり、世界各国のデジタル活用事例を紹介してきました。
デジタル競争力ランキングの内訳からも、日本はまだまだデジタル化において後れをとっていることがわかりました。
ここ最近は「DX」という言葉がよく使われるようになり、実際に50%以上の企業はDX化に着手してるそうですが、そのうち9割を超える企業は未だ不十分な取り組みであることが指摘されています。
めまぐるしく変化するこの世界に対応するためには、それに合わせて素早く変革し続けることが重要になってきます。
今後の日本ではこれまで以上に、顧客や社会にとっての課題を素早く捉えて常に変革していくことで、デジタル化の後れを取り戻していきたいところですね。