株式投資の初心者でも、もし買えたら非常に高い確率で利益を上げられるIPO株(新規公開株)。しかしIPO株を買う権利は抽選によって得られるため、「買いたくても買えない」「なかなか当たらない」と困っている投資家も多いでしょう。
IPO株の人気は高く、当選確率は1〜2%と言われています。そのため簡単には当たらず、当選させるにはある程度の知識や工夫が必要です。
そこで今回は、IPO株の基礎知識を始め、IPO株の当選確率を上げる方法などを分かりやすく解説します。IPO株がなかなか当たらない人、初心者だけどIPO株を詳しく知って挑戦してみたい人などは、ぜひ参考にしてみてください。
IPO株とは?概要とメリット
まず最初は、IPO株の概要やメリットについて、簡単におさらいしていきたいと思います。
IPOとは「Initial Public Offering=新規公開株」のこと
IPOは「Initial Public Offering」の略で、「新規株式公開」や「新規公開株」などの意味になります。
したがってIPOは、まだ証券取引所に上場していない企業が自社の株式を新しく発行したり、または上場を予定している企業の株主が株式を売却するなどして、一般の投資家が売買できるようにすることを言います。
「IPO」に対して「PO(Public Offering)」もあり、POの場合はすでに上場している企業が追加で株式を発行したり、大株主が保有する株式を売却するなどして、一般投資家が売買できるようにすることを言いますね。
ただしIPO株は誰でも自由に売買できるわけではなく、抽選に当選した投資家だけが買う権利を得られます。人気のある企業のIPO株の倍率は高くなるので、抽選にはなかなか当たらない場合もあります。
IPOは成長が期待できる企業へ投資できる
若手企業にとって証券取引所への上場は、市場からの資金調達はもちろん、自社の社会的信頼性やブランド力を上げる目的などで行われます。
一方で投資家にとってIPOは、これから上場し成長が期待できる企業の株を先んじて買える形になります。一般にIPO投資では、初値で売却して利益を確保するのが基本的とされますが、株式は保有し続けることも可能。IPOは有望企業への投資において、有利なタイミングで株を買えるチャンスとも言えますね。
IPO株は高確率かつ短期間で利益を上げやすい
IPO株の魅力としては、上場後に高い確率で株価が上昇すること、そして短期間で利益を上げやすいことが挙げられます。
それを示す1つの指標として、初値の上昇率があります。以下は2020年〜2022年の各年で、初値での売却益が大きかった企業のトップ3です。
2022年
銘柄 | 公募価格 | 初値 | 騰落率 | 初値売却益 |
ウェルプレイド・ライゼスト | 1,170円 | 6,200円 | 430.0% | +503,000円 |
ANYCOLOR | 1,530円 | 4,810円 | 214.4% | +328,000円 |
イーディーピー | 5,000円 | 8,200円 | 64.0% | +320,000円 |
2021年
銘柄 | 公募価格 | 初値 | 騰落率 | 初値売却益 |
アイ・パートナーズフィナンシャル | 3,120円 | 9,880円 | 216.7% | +676,000円 |
サイバートラスト | 1,660円 | 6,900円 | 315.7% | +524,000円 |
ベビーカレンダー | 4,200円 | 9,400円 | 123.8% | +520,000円 |
2022年
銘柄 | 公募価格 | 初値 | 騰落率 | 初値売却益 |
ヘッドウォータース | 2,400円 | 28,560円 | 1,090.0% | +2,616,000円 |
アースインフィニティ | 1,970円 | 10,410円 | 428.5% | +844,000円 |
ビートレンド | 2,800円 | 10,010円 | 257.5% | +721,000円 |
さらに近年のデータでは、8〜9割のIPO株が公募価格以上の初値をつけていることが知られています。もし抽選に当たってIPO株を買えたなら、その時点で高い勝率が約束されていると言っても過言ではないでしょう。
購入時に手数料がかからない
一般的な株式の売買には手数料が必要ですが、IPO株の場合は購入時や抽選参加のための手数料は不要です。ただし売却する際には手数料がかかります。
IPO株は基本的に100株からの買い付けになりますが、1株から買えるサービスを提供している証券会社もあるので、少ない金額からでも挑戦しやすい株取引となっています。
NISA口座を使えば非課税にできる
IPO株はNISA口座での売買にも対応しているため、利益に対しておよそ20%かかる税金を非課税にできます。
2021年で最も初値での売却益が大きかったのが「 アイ・パートナーズフィナンシャル」で、100株買った場合+676,000円の利益が出ましたが、通常の証券口座で取引した場合は14万円弱が税金で取られる形になります。NISA口座は1人につき1口座までしか作れないなどの注意点はありますが、利益に対する税金を非課税にできるのは大きいですね。
IPO株の抽選に応募するためにNISA口座を開設する場合は、IPO株の取り扱い数や主幹事数の多いSBI証券やSMBC日興証券などがおすすめです。
IPO株の買い方と抽選の種類
IPOは一般投資家でも買うことのできる新規公開株ですが、いつでも好きな時に買えるわけではなく、抽選に当たった人だけが買う権利を得られます。
ここでは、IPO株を買うまでの流れ、そして抽選の種類を確認したいと思います。
IPO株の買い方
IPO株を買う手順は、基本的に以下のようになります。
- IPO株を扱う証券会社で口座開設をする
- IPO企業の情報を確認する
- 期間内に申し込み、抽選の結果を待つ
各手順について、もう少し詳しく見ていきましょう。
IPO株を扱う証券会社で口座開設をする
IPO株は、すべての証券会社が平等に扱っているわけではありません。
証券取引所への上場手続きを主に担当する「主幹事」と呼ばれる証券会社などを中心に、株式の割り当てが決まっているため、比較的当選しやすい証券会社もあれば、そもそも割り当てが少なく、どれだけ頑張っても抽選に当たりにくい証券会社もあります。
そのためIPO株を狙う場合は、適切な証券会社を選んで証券口座を開設することが大事な第一歩になりますね。
IPO企業の情報を確認する
次にすることは、IPO企業の情報確認です。
新規で上場しIPO株を発行する企業の数は、2015年以降は年間でおよそ100社前後となっています。IPO株の抽選を行うタイミングも企業によって様々なので、各企業のIPOスケジュールを把握しておくことは重要ですね。
そしてIPO株を発行する企業情報を調べることも、非常に大切なことです。成長が期待できる人気企業であれば、高い初値をつけて利益を出せますが、人気のない企業の場合は公募価格割れを起こすこともあります。
期間内に申し込み、抽選の結果を待つ
抽選へ申し込むには、「ブックビルディング期間(需要予測期間)」と呼ばれる申し込み期間内に証券会社の個人ページへログインして、IPOのページにある「目論見書」を確認し、希望価格や株数を入力します。投資家の意思が反映される形で、実際に売り出される「公募価格」が最終的に決定されるわけですね。
抽選に申し込む際は、基本的に前受金として当選した場合に必要な資金をあらかじめ口座へ入れておかなければいけないのでご注意ください。
IPO株はそれぞれで抽選日も決まっているので、もし当選したら期間内に株式を購入しましょう(申し込み方法や当選した場合の購入方法について、詳しい手順は各証券会社の手続き方法を参照してください)。
IPO株の抽選種類
ここで気になるのが、IPO株はどのようにして抽選されるか、と言うことではないでしょうか。
IPO株の抽選や分配方法には、大まかに分けて3つのパターンがあります。
- 完全平等抽選
- 口座資産額やポイントなどが考慮される抽選
- その他の配分方法
各抽選方法について、詳しく確認していきましょう。
完全平等抽選
完全平等抽選とは、全ての投資家が平等に、一人一票として機械によって当選者が決まる方法です。
新規でIPO株に挑戦してみたいと言う投資家にとって、完全平等抽選はおすすめの抽選方法ですね。
口座資産額やポイントなどが考慮される抽選
証券口座にある資産額や過去の取引量などから、よりアクティブな投資家を優遇して抽選する方法です。ステージ抽選などとも言われますね。
他にも、SBI証券の「IPOチャレンジポイント」では、抽選に外れた時にポイントが貰えて、そのポイントが多いほど当選しやすくなると言う、敗者復活のような独自の制度があります。
完全平等抽選と、ステージ抽選やポイント制度のように既存顧客を優遇するような抽選方法を組み合わせて行っている証券会社は多いですね。
その他の配分方法
抽選以外にも、証券会社によっては裁量判断によってIPO株を配分する制度を設けているところもあります。または店頭とネットで配分方法が異なるなどの場合もありますね。
このように抽選方法は様々あるので、証券会社を選ぶ際には注意したいポイントとなっています。
IPO株が当たらない理由
抽選によって購入の権利が得られるIPO株ですが、ここからは「IPO株は当たらない」と言われる理由を確認していきたいと思います。
そもそもIPO株の当選確率は1〜2%と低い
IPO株の当選確率は一般的に1〜2%と言われていますが、小型IPOでは0.1%〜0.5%、大型IPOでは5%〜10%などとも言われており、新規上場企業の規模などによっても異なります。
IPO株はローリスクハイリターンな株式投資として人気があるため、簡単には当たらないと言うのが現状です。しかし、年間のIPO件数は100件前後あることを踏まえると、「挑戦する回数を増やせば当選することも夢ではない」とも言えるでしょう。
抽選倍率の高い証券会社しか使っていない
IPO株は、証券会社によって割り当てられる数が決まっています。主幹事と呼ばれる中心的な証券会社にはそのIPO株全体の90%割近くが割り当てられることもありますが、そうではない証券会社の場合は、1%程度の割り当て株数になることも珍しくありません。取り扱う株数が少ない証券会社しか使っていないと、それだけで抽選倍率は不利になってしまいますね。
また、割り当て数はそこそこあっても、口座開設数が多い証券会社から抽選に申し込めば、競合が多くなるためやはり抽選の際には不利になります。
IPO株の抽選は証券会社単位で行われるので、「どの証券会社を利用して抽選に臨むのか」と言う戦略も重要になってきます。
抽選の方法が自分に合っていない
証券会社によってIPO株の抽選方法は様々で、完全平等抽選だけを行っている証券会社ばかりではありません。
その証券会社での取引実績や、口座にある資産額によって当選率が優遇される制度も併用している証券会社もあるので、新規口座開設した投資家にとっては、そうした証券会社を利用してもIPO抽選には当たりにくいと言えるでしょう。
IPO株が当たらない時に試したい、5つの方法
一般に1〜2%と言われるIPO株の当選確率ですが、この割合はいくつかの工夫によって上げることが可能です。
ここからは、IPO株で当選しやすくする方法を見ていきたいと思います。
複数の証券口座を利用する
IPO株の抽選は、「1人あたり1つの証券会社の1つの口座からしか申し込めない」などのルールはありません。そのため、複数の証券会社から抽選に申し込む事は、当選確率を上げるための第一歩になります。
複数の証券会社を利用すると、それだけ手数料がかかってしまうのでは、と心配されるかも知れませんが、証券会社での口座開設は基本的に無料で行えますし、開設した証券口座には口座維持手数料のようなものはありません。
また、同じ証券会社でも家族口座などを使って申し込む口座数を増やせば、それだけ当選確率を上げられます。
このように複数の証券口座を利用することは、コストをかけずに当選確率をアップできる方法と言えますね。
「主幹事」と呼ばれる主要な証券会社を利用する
IPOにおける主幹事証券会社は、企業が上場するために必要な事務手続きやスケジュール管理、さらには株価の設定など、様々な面で関わりアドバイスを行います。
IPO株の発行数は決まっており、それらが複数の証券会社に割り当てられますが、その割合が多いのも主幹事を務める証券会社ですね。主幹事に割り当てられるIPO株の割合は、全体の8〜9割になるため、言い換えれば主幹事証券会社で口座を開設して抽選に申し込むことは、IPO株に当選するためには必須の戦略と言えます。
主要な主幹事としては、以下のような証券会社があります。
- みずほ証券
- 野村證券
- SMBC日興証券
- SBI証券
- 大和証券
中でもネット証券としては、SBI証券、SMBC日興証券などはIPOの抽選に有利な証券会社と言われていますね。上記以外にも、主幹事のグループ会社などでもIPO株の取り扱い実績の多いところはあるので、そうした証券会社も狙い目です。
主幹事証券会社と言っても、ネット取引よりも店頭取引の方が優遇されていて、ネットから申し込んでも当選しないのでは?と思われるかも知れません。実際に、大手証券会社では店頭取引をする顧客の中から裁量判断でIPO株を売る相手を決めて、残った数割をネット取引をする顧客などに対して抽選を行っている、と言う場合もあるようです。そのためインターネット経由のみで株取引を行う投資家にとっては、主幹事を務めるネット証券会社を利用するのが、効率よくIPO株の当選確率を上げる方法と言えます。
自分に合った抽選制度の証券会社を利用する
証券会社は、自社に配分されたIPO株をどうやって売るのか、抽選や裁量判断などの様々な方法で決めています。
取引量や資金量の多い顧客に対して、裁量判断や優遇された抽選によってIPO株を提供する方法もあるので、「自分は大口顧客だ」と自信のある人はそうした方法を行っている証券会社を利用すると当選確率は上がるかもしれません。
しかし、取引実績や資金量の少ない投資家にとっては、そうした分配方法は不利ですよね。そのため初心者投資家には、誰にでも平等にチャンスがある完全平等抽選を行っている証券会社を利用することがおすすめです。
また、SBI証券では「IPOチャレンジポイント」という独自のポイント制度を設けています。このポイントはIPO抽選の外れた時に1ポイント付与され、ポイントが多いと当選しやすくなるというもの。当選していない顧客ほど優遇される抽選制度と言うわけですね。
抽選の割合などは証券会社ごとで違うので、自分に合った抽選制度の証券会社を利用することも大事なポイントです。
抽選時間の違いを利用する
IPO抽選に申し込むには、当選した場合の買い付け金額をあらかじめ証券口座に入れておかなければいけません。したがって、複数の証券口座を利用して抽選に挑む場合は、それだけ多くの資金が必要になります。
しかし、「投資資金はあまりないけど、出来るだけ多くの抽選に参加したい」と言う投資家も多いでしょう。その場合、証券会社ごとの抽選時間の違いを利用する方法があります。
IPOの抽選は、基本的に抽選後に購入の意思を示して買い付ける形になりますが、いわゆる「後期型」と言って、購入の申し込みをした後で抽選を行う証券会社もあります。このようにスケジュールの違う証券会社では、同じIPO株でも抽選日に数日のズレが出てくるので、この違いを利用すると1回分の資金で2回の抽選に参加することが可能です。
口座開設数の少ない証券会社も検討する
IPO株の抽選は証券会社ごとに行われるので、口座開設数の多い証券会社はそれだけ競合投資家も多いことになります。
主幹事を務める証券会社はIPO株を狙う上では外せませんが、そうしたところで一通り口座開設を済ませた人であれば、IPO株の取り扱い実績と口座開設数の割合を見て有利そうな証券会社を利用してみてはいかがでしょうか。マネックス証券、auカブコム、岡三オンライン証券などは狙い目の証券会社として挙げられることが多くおすすめですね。
IPO株を狙う際に知っておきたい注意点
魅力的なIPO株への投資ですが、メリットばかりではありません。
最後は、IPO株を狙う際の注意点を確認したいと思います。
当選しても必ず儲かるわけではない
投資家からの注目度が高く、初値で売却した際の勝率では8〜9割が期待できるIPO株ですが、裏を返せば1割程度のIPO株は初値で売却した際に損失が出ていることになります。
例えば2021年は合計で126社が上場しましたが、そのうちの104社で公募価格以上の初値をつけ、20社は公募価格割れを起こしています(初値=公募価格だった企業も2社あり)。そのため、IPO株は必ず儲かるわけではないことは知っておく必要がありますね。
ただし、2021年に最も騰落率が低かったのは「Finatextホールディングス」の-23.3%で、その他の公募価格割れを起こしたIPO株でも-10%前後の騰落率となっています。反対に、公募価格を超えたIPO株の平均騰落率はおよそ+70%。したがって、一時的に損失が出ることがあっても、買い続けていればいつかは利益が上回る可能性が極めて高いとも言えます。
多くの抽選に参加するには、その分だけ資金が必要になる
IPO株が当たる確率は1〜2%と言われており、当選率を上げるには複数の証券口座から抽選に申しこむなどの工夫が必要です。
しかしIPO株の抽選に参加するには、当選した場合に必要な買い付け金額を証券口座に入れておかなければいけません。もしあるIPO株の買い付け金額が10万円で、それを5つの証券会社から抽選に参加する場合、単純計算で50万円が必要になりますね。しかもその金額は、基本的に抽選が終わるまで動かすことができないため、資金が拘束される期間が発生することになります。
証券会社ごとの抽選のスケジュールの違いを利用して、1回分の買い付け金額で2社の抽選を行う方法もありますが、多くの抽選に参加して当選確率を上げるには、相応の資金が必要になると考えた方が良いでしょう。
まとめ
今回はIPO株の基礎知識から、抽選に当たらない理由、そして当選確率を上げる方法などを詳しくご説明してきました。
基本的には当選確率の低いIPO株ですが、投資家の努力や工夫によって確率を上げることは可能です。最も基本的な方法は、複数の証券会社から抽選に申し込むことや、IPO株の取り扱い数が多い主幹事などの証券会社を利用することですね。それ以外でも、SBI証券のチャレンジポイントを利用したり、抽選のスケジュールの違いを利用する方法なども考えられます。
当選すれば高確率で大きな利益を得られるIPO株なので、ぜひ色々な方法を試して挑戦してみてくださいね。