TwitterやYouTubeをはじめ、インターネット上で投資関連の情報をチェックしている人なら、「ツミレバ」という言葉を一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
ツミレバとは、レバレッジ型投資信託の一種のこと。レバレッジをかけた投資信託のため少額ずつでも大きな運用益を上げられる可能性がありますが、それと同時にレバレッジ投資特有の危険性も持っているため、利用の際は十分に注意しなければいけません。
今回は、ツミレバやレバナスといったレバレッジファンドについて、基礎知識や特徴、そしてメリットや危険性について解説していきます。
ツミレバ初心者でも分かりやすい内容となっているので、投資や資産形成に興味がある人はぜひ参考にしてみてくださいね。
「ツミレバ」とは
ツミレバという投資方法について、「聞いたことはあるけど詳しく知らない」という人も多いかもしれませんね。
まず最初は、今注目されているツミレバとは何か、基礎的な内容を確認していきたいと思います。
大和アセットマネジメントが提供するレバレッジファンドの名前
ツミレバとは、大和アセットマネジメントが提供するレバレッジファンドの名称です。「積立(ツミタテ)」と「レバレッジ」を組み合わせた同社による造語で、その名の通りレバレッジの効いた積立投資となっています。
大和アセットマネジメントのツミレバには、「iFreerレバレッジNASDAQ100」や「iFreerレバレッジS&P500」など、投資する株価指数などによって複数のファンドがあり、自由に選択することができます。
中でも高い人気があるのは、米国の主要な株価指数であるナスダックを投資対象とした「iFreerレバレッジNASDAQ100」で、「レバナス」と呼ばれることもありますね。レバナスでは、大和アセットマネジメントのもの以外にも、楽天証券が提供する「楽天レバレッジNASDAQ-100」など、いくつかのレバレッジファンドがあります。
対象指数とレバレッジ倍の連動を目指すレバレッジファンド
一般にレバレッジファンドでは、投資対象となる指数と連動しつつ、レバレッジ倍の値動きになることを目指しています。例えば対象となる指数が1日に3%上昇したなら、レバレッジ2倍のファンドでは6%上昇します。同様に対象指数が1日に4%下落したなら、レバレッジファンドは8%の下落になる、という形です。
ツミレバもこうしたレバレッジファンドの1つであり、基本的なレバレッジは2倍となっています。対象となる指数が上昇を続けている時は複利によって大きなリターンが期待できますが、反対に下落が続いた場合はその分資産を減らす危険があります。
FXなどでレバレッジ取引を行った経験のある人も多いかも知れませんが、ツミレバでいうレバレッジとは少々ニュアンスが異なるので注意したいですね。
ナスダックなど成長が期待できる米国株価指数を対象としている
レバレッジ型ファンドが得意とするのは、上昇傾向にある投資対象です。当然のことながら投資対象が下落傾向にある場合は資産を減らすことになり、保ち合い傾向にある投資対象でもレバレッジ型の性質上、資産は目減りする危険性があります。
反対に、レバレッジ型ファンドに対して「インバース型ファンド」というものもあります。インバース型は、投資対象の値動きに対して、レバレッジの倍率分だけ反対の値動きになることを目指して運用されるファンドですね。
ツミレバで投資対象となっているものは、「NASDAQ100」「S&P500」「FANG+」のように、今後も成長が期待できる米国株価指数です。ただし、世界有数の企業による株価指数といっても延々と上昇し続けるわけではなく、世界情勢などの影響を受け、大きな調整局面が必ず現れます。そうした危険性は、十分に把握しておく必要があるでしょう。
ツミレバ投資の特徴
ここまでは、ツミレバについて基本的な事柄を確認してきました。
続いて、騰落率の違いや時間分散効果などから、より詳しくツミレバの特徴を見ていきたいと思います。
ツミレバと対象指数では騰落率が異なる
ツミレバは、株価指数の2倍の値動きを目指すレバレッジファンドですが、投資対象となる指数と同じ騰落率(一定期間内での値動きの変化の割合)になるとは限りません。特に、運用日数が2日以上になる場合、騰落率には大きな違いが出てくる場合があります。
例えば、対象指数の騰落率が、ある日を基準にして1日目は10%下落、2日目は10%上昇となったとします。そうした場合、対象指数の値動きと騰落率の推移は以下のように表せます。
基準日 | 1日目 | 2日目 | |
1日の騰落率 | 0 | -10% | +10% |
対象指数の値動き | 100 | 90 | 99 |
そうした対象指数の値動きに対して、ツミレバは2倍の値動きになるように運用されるため、1日目は20%下落、2日目は20%上昇となり、騰落率は以下のように推移します。
基準日 | 1日目 | 2日目 | |
1日の騰落率 | 0 | -20% | +20% |
ツミレバの値動き | 100 | 80 | 96 |
元となる指数は基準日に対して2日目の騰落率はマイナス1%だったのに対し、ツミレバの騰落率は基準日から数えてマイナス4%。2倍以上のマイナスとなっています。
このように、レバレッジ倍の値動きを目指して運用されるツミレバなどのレバレッジファンドでは、相場変動時には対象指数の騰落率と連動しない場面が出てきます。さらには、対象指数が保ち合いとなった場合、対象指数そのものの価格は横ばいでも、レバレッジファンドは右肩下がりに資産を減らす可能性もありますね。
また、運用日数が1日である場合でも、手数料やその他コストなどの影響によって、対象指数に対して必ずしもレバレッジ倍の騰落率にはならない、ということも覚えておきましょう。
時間分散の効果を得られる
ツミレバは、レバレッジをかけた積立投資です。そのため、以下2つの意味で時間分散の効果を得ることができると言われています。
ドルコスト平均法による時間分散効果
積立投資であるツミレバでは、毎月決まった金額を定期購入します。そのため、一括で購入する場合とは違い、ドルコスト平均法による時間分散効果を得ることが可能です。
ドルコスト平均法とは、ある1つの価格変動のある金融商品に対し、決まった金額を定期的に購入することで平均購入価格を下げることを目指す方法ですね。ツミレバは、ナスダックのように長期的に見て上昇傾向にある金融商品に投資するレバレッジファンドなので、ドルコスト平均法の効果を得やすいと考えられます。
レバレッジの活用による時間分散効果
一般的な積立投資(レバレッジ1倍)と、ツミレバ(レバレッジ2倍)のようなレバレッジファンドを比べた場合、ツミレバの方は一般的な積立投資の半分の時間で資産を市場の影響下にさらすことができます。
こうしたレバレッジの効果を活用することは、投資期間の後半の方がより市場の影響を受けやすい積立投資の弱点を克服し、時間分散効果を高めるといわれています。さらに、投資期間の後半に向けて投資のボリュームを下げることにより、より時間分散効果は高まるという考え方もあります。
ツミレバ投資の魅力・メリット
ツミレバの基本的な考え方を確認したところで、ここからはツミレバのメリットを見ていきたいと思います。
上昇局面でのリターンが大きい
レバレッジファンドであるツミレバの最大の強みは、投資対象の指数が上昇している時のリターンが非常に大きくなることです。
例として、対象指数が1日に3%ずつ上昇した場合の、5日後の価格の違いを見てみましょう。
対象指数
基準日 | 1日目 | 2日目 | 3日目 | 4日目 | 5日目 | |
1日の騰落率 | 0 | +3% | +3% | +3% | +3% | +3% |
対象指数の値動き | 100 | 103 | 106 | 109 | 113 | 116 |
ツミレバ(レバレッジ2倍)
基準日 | 1日目 | 2日目 | 3日目 | 4日目 | 5日目 | |
1日の騰落率 | 0 | +6% | +6% | +6% | +6% | +6% |
ツミレバの値動き | 100 | 106 | 112 | 119 | 126 | 134 |
5日間の対象指数の騰落率が+16%だったのに対し、複利効果が働くツミレバでは、その2倍を超える+38%となっていますね。
ツミレバの複利効果は、上昇局面での投資期間が長くなるほど有利になります。同じ条件のまま20日間まで期間を拡大してを比べると、対象指数では+81%になるのに対して、ツミレバは+221%と大きな違いを生み出します。
大和アセットマネジメントによるシミュレーションでは、1996年6月末から2021年8月末までの期間、NASDAQ100をツミレバ(レバレッジ2倍)で毎月3万円積み立てた場合、元本は798万円、レバレッジなしの積立では6,344万円に対し、ツミレバでは1億8,154万円の資産を築けたとしています。
資産合計 | 元本との差 | |
元本 | 798万円 | ー |
レバレッジなしの積立 | 6,344万円 | 約7.9倍 |
ツミレバ | 1億8,154万円 | 約22.7倍 |
この期間の途中には、リーマンショックやコロナショックなどの局面もありました。しかし、それでも長期的に上昇を続けているナスダックでは、ツミレバ投資では大きなリターンを得られる可能性があることが、過去の例では示されていますね。
このことからツミレバは、比較的短い期間でも資産を増やすことが可能な投資信託といわれています。
少額からでも高いリターンを狙える
レバレッジをかけられる金融商品全般にいえることですが、レバレッジを活用することで、比較的少ない資金でも高いリターンを狙うことが可能になります。
ただし、ツミレバでのレバレッジは、それ以外の投資・投機におけるレバレッジとは若干ニュアンスが異なります。自分の資金に対してレバレッジをかけて効率を高めるというよりは、ナスダックなどの主要株価指数のレバレッジ倍の値動きになるよう運用されるファンドに、自身の資金を乗せていく、という形になる点はよく理解しておく必要があります。
レバレッジによって若年層でもエクスポージャーを高められる
一般に若年層は、エクスポージャー(市場変動にさらされている資産やその割合)が低くなります。積立投資の場合この傾向は大きく、投資期間の初期よりもある程度年齢の進んだ後期の方が、市場にさらしている資金の量は大きくなるため、その時に起こる相場の変動の影響を受けやすく、時間分散の点で見れば理想的とはいえません。
また、投資による資産形成を目指すためには、なるべく若いうちから投資信託などで運用を行いたいところですが、若年層の場合は、例えば子育てなどをはじめとした人生の節目ごとの出費が想定されるため、投資資金を捻出することも容易ではないでしょう。
そうした際に、ツミレバのようなレバレッジをかけられる投資信託を利用することで、投資期間の初期段階からエクスポージャーを高めることができます。全体的な時間分散効果を上げるために、有効な選択肢になるでしょう。
ツミレバに追証はない
投資の内容や金融商品によっては、元本を超える損失が発生するものもあります。例えばFXなどがその1つであり、取引の仕方や値動きによっては、多額の追証を抱える事態になる危険があります。
それに対してツミレバは、レバレッジをかけた投資ではありますが、投資信託であるため資金が減ってきたとしても追証を求められるようなことはありません。元本を超える損失が出ることはなく、基準価格が下がったタイミングで買い増すことも可能です。
ただし、ツミレバでは株価指数といった値動きのある商品に投資をするため、投資元本を割り込む場合はあります。またそれとは別に、繰上償還の危険性がある点も注意したいですね。繰上償還のリスクについては、次章の「繰上償還される危険がある」の項目をご確認ください。
ツミレバ投資が危険といわれる理由・デメリット
特に投資初心者の場合は、メリットばかりに目が向いてしまい、損失が発生するリスクを軽視してしまいがちです。レバレッジの効いた金融商品であるツミレバでは、大きな利益をもたらす可能性があると同時に、危険性もあることを知っておく必要がありますね。
ここからは、ツミレバのデメリットについて確認していきたいと思います。
対象指数の下落局面に弱い
ツミレバは、ナスダックなど投資対象となる株価指数のレバレッジ倍の値動きになることを目指して運用されるファンドです。そのため、対象指数が下落すればツミレバも下がり、資産は目減りすることになります。
例として、対象指数が1日に5%ずつ下落した場合の、5日後の価格の違いを見てみましょう。
対象指数
基準日 | 1日目 | 2日目 | 3日目 | 4日目 | 5日目 | |
1日の騰落率 | 0 | -5% | -5% | -5% | -5% | -5% |
対象指数の値動き | 100 | 95 | 90 | 86 | 81 | 77 |
ツミレバ(レバレッジ2倍)
基準日 | 1日目 | 2日目 | 3日目 | 4日目 | 5日目 | |
1日の騰落率 | 0 | -10% | -10% | -10% | -10% | -10% |
ツミレバの値動き | 100 | 90 | 81 | 73 | 66 | 59 |
基準日から数えて、対象指数の騰落率は-23%になるのに対し、ツミレバの騰落率は-41%となっており、対象指数よりも大きな下落を見せています。このようにレバレッジファンドは、対象指数の下落局面に弱い特徴があります。
対象指数の保ち合い局面にも弱い
対象指数が下がればツミレバも下がってしまうのは想像しやすいでしょう。しかし、ツミレバの弱点はそれだけではなく、対象指数の保ち合い局面でも資産を減らす可能性があるという特徴があります。
例として、対象指数が上下動しながら推移した場合の、5日後の価格の違いを見てみましょう。
対象指数
基準日 | 1日目 | 2日目 | 3日目 | 4日目 | 5日目 | |
1日の騰落率 | 0 | +3% | -5% | +3% | +2% | -6% |
対象指数の値動き | 100 | 103 | 98 | 101 | 103 | 97 |
ツミレバ(レバレッジ2倍)
基準日 | 1日目 | 2日目 | 3日目 | 4日目 | 5日目 | |
1日の騰落率 | 0 | +6% | -10% | +6% | +4% | -12% |
ツミレバの値動き | 100 | 106 | 95 | 101 | 105 | 93 |
基準日から数えて、対象指数の騰落率は-3%になるのに対し、ツミレバの騰落率は-7%となっています。対象指数がほぼ横ばいなのに対して、ツミレバはやや下げている状態ですね。
こうした保ち合いでの弱さは、ある程度の期間を置いた場合にも大きく見られる場合があります。例えば対象指数の騰落率が3ヶ月間の中で-10%になった場合、ツミレバが-20%で済むかというとそうではありません。その期間の値動きによっては、より大きなマイナスが発生する可能性があります。
このように、ツミレバで運用益を上げるためには、投資対象の株価指数が長期的に見て上昇することが前提になっている、という点は知っておく必要があります。
投資期間後半の影響力が大きい
本記事の「ツミレバ投資の特徴」の項目では、ツミレバにはレバレッジによる時間分散の効果があるとご説明しました。
しかしツミレバ投資を長期間続けた場合は、リスクにさらされている資金が多い投資期間後半の方が、その時の市場の影響を受けやすくなります。
例えば、毎月5万円の投資額でツミレバを行なったとして、最初の1年目で50%のドローダウンが発生するのと、10年目になって50%のドローダウンが発生するのでは、元の水準まで復帰するたのに必要な時間は、圧倒的に後者の方が多くなります。
相場が下げた時に加速して下げてしまうのがレバレッジファンドのデメリットでもあるため、こうした危険性を理解し、何らかの対応手段をあらかじめ用意しておく必要があるでしょう。
資産増減が激しく初心者向きではない
ツミレバは、レバレッジのない一般的な投資信託に比べて市場の影響を受けやすく、資産の増減が激しい金融商品です。「TwitterやYouTubeで色んな人がツミレバを勧めてるから」とか「早く資産を増やしたいから」などの理由だけで投資初心者が手を出すのは危険でしょう。
現在長期的な上昇トレンドにあるナスダック総合指数も、2000年代初頭のITバブル崩壊時には最大70%もの下落を見せており、それ以降もリーマンショックやコロナショックなどの大きな調整局面が度々発生しています。
現に2022年のナスダック100は、1月の最高値から11月時点で最大37%程度の下落を見せており、ツミレバブームに乗って来たばかりの投資家に試練を与えています。こうした事態を想定し、適切な対応を用意できる投資家でなければ、ツミレバはおすすめできません。
繰上償還される危険がある
繰上償還とは、投資信託において予定されていた期日を前倒しして投資家に資金が返還されることをいいます。受益権の口数が規定を下回り運用が難しくなった場合や、投資対象となる指数などが廃止された場合などに行われます。
ツミレバでも、繰上償還が行われる可能性があります。例えば2022年のナスダックはリーマンショックの再来ともいわれる下落の中にあるため、もしこのまま下がり続けば「iFreerレバレッジNASDAQ100」の人気はなくなり、受益権の口数が繰上償還の規定である30億口を下回るなどすれば、ファンドそのものがなくなって大きな損失だけが残るという危険性もないことはありません。
ただし、「株価指数の下落=安く買えるチャンス」と捉える投資家も多いため、受益権の口数は増えるデータもあります。また、主要な米国株価指数が廃止される可能性も考えにくいので、繰上償還のリスクは今の所は低いのですが、そうした危険性があることは念頭に置きたいですね。
ツミレバ投資の危険性を過去の例から確認
引き続き、ツミレバの持つリスクや危険性について確認していきたいと思います。
ここからは「もし大きな損失が出た場合にどうなるのか」という点に焦点を当てて見ていきましょう。
大きな損失が出ると資産を回復しにくくなる
本記事でもすでにお伝えしているように、ツミレバは対象指数の下落局面に弱いデメリットがありますね。実はそれだけではなく、下落から上昇に転じた局面でも資産が増えにくい特徴があります。
例として、対象指数がある期間内に30%下落し、40%上昇した場合を見てみましょう。
対象指数
基準日 | 期間① | 期間② | |
期間内の騰落率 | 0 | -30% | +40% |
対象指数の値動き | 100 | 70 | 98 |
ツミレバ(レバレッジ2倍)
基準日 | 期間① | 期間② | |
期間内の騰落率 | 0 | -60% | +80% |
ツミレバの値動き | 100 | 40 | 72 |
対象指数がほぼ元の水準に戻ったのに対し、ツミレバは-28%と依然低迷しています。相場が大きく下げてから回復する時に、「こんなことなら、レバレッジなしの普通の投資信託の方が安定していた」と後悔する場面があるかもしれませんね。
ITバブル崩壊時の場合、元本までの回復に17年かかる
上の例に続き、もう少し具体的なシミュレーションを見たいと思います。
2000年代のITバブル崩壊時に、ナスダックはおよそ70%の下落を見せました。もしそのバブル崩壊前である1996年からツミレバ投資をしていた場合、元本比で最大96%のマイナスが発生し、そこから元本まで回復するのには17年かかるといわれています。
元本がほとんどなくなってしまう事態は精神に大きな負荷を与えますし、それでも諦めずに20年近く投資を続けることは容易ではないでしょう。そもそも、それだけ大きな元本割れを起こすような事態が発生した場合、受益権口数の減少による繰上償還が起きる可能性も否めません。
もちろん、その当時にはツミレバという商品は存在しなかったので、あくまでシミュレーションとなります。しかし、こうした事態は今後も起こりうる、という前提は持っておくべきでしょう。
金融庁はツミレバ投資の危険性に対し注意喚起を行っている
ツミレバの危険性について、最後は金融庁による注意勧告を確認したいと思います。
金融庁では、ツミレバのようなレバレッジの効いた投資信託を利用する投資家に向けて、2021年6月30日に以下のような注意喚起を行っています。
レバレッジ型・インバース型 ETF 等への投資にあたってご注意ください
〇 レバレッジ型・インバース型 ETF 等は、主に短期売買により利益を得ることを目的とした商品です。
〇 投資経験があまりない個人投資家の方が資産形成のためにこうした ETF 等を投資対象とする際には、取引の仕組みや内容を十分理解し、取引に伴うリスク・コストを十分に認識することが重要です。
https://www.fsa.go.jp/user/20210630_levETF2.pdf
この注意喚起はPDFで3枚分の書類ですが、本記事として内容を要約すると以下のようになります。
- レバレッジファンドは、短期売買で利益を得ることを目的としている
- レバレッジファンドは、相場が変動した時に対象指数などの原資産と価格が連動しない(レバレッジ倍にならない)可能性がある
- こうした理由によって、投資初心者がレバレッジファンドにより長期的な投資を行う場合は、十分な注意が必要である
当然ですが、つみたてNISAなどにはレバレッジ型やインバース型の投資信託は含まれていません。決して「金融庁がツミレバを禁止している」ということではありませんが、利用はあくまで自己責任で行う必要があるといえるでしょう。
ツミレバ投資を行う際の注意点
最後は、それでもツミレバに興味がある、やってみたい、という人に向けて、最低限押さえておくべき注意点を確認したいと思います。
投資対象の価格は下がることもあると理解する
ツミレバが取引対象とする米国株価指数は、世界でも有数の企業による総合指数です。そのため長期的には右肩上がりで上昇していくことが期待されていますが、歴史的に見て、短期的には大きく下落する局面が定期的に現れます。
人生設計に必要なお金はツミレバに回さない
例えば「○年後に家を建てたいから、その資金作りとしてツミレバで投資をしよう」などの発想は危険です。
なぜなら、ツミレバは他の投資信託と比べて、相場の変動の影響を受けやすい商品だからです。元本割れのリスクはもちろんのこと、順調に資産が増えたとしても、市場の風向きが変われば急激に資産を減らしてしまう可能性もありますね。
ツミレバでの投資が思う通りにいかなくても、それが悪影響を及ぼさない人生設計が必要でしょう。
一括投資ではなく、毎月無理のない範囲で積み立てる
相場変動のリスクや時間分散効果を考えると、ツミレバは一括投資よりも毎月定額を積み立てた方が良いです。特に初心者の場合は、まずは失っても痛くはない金額から初めて実戦経験を積むのが良いでしょう。
インターネット上には「毎月○万円積み立てて、○千万円稼ぐ!」のような文字が踊っていますが、その多くは過去のデータを上手に抽出して作り上げた、都合の良いバックテストの結果に過ぎません。そうした宣伝文句に踊らされずに、自分自身の資金力や経験と向き合って、最適な投資スタイルを見つけ出すことが重要でしょう。
まとめ
今回は、ツミレバ投資の特徴や危険性などについてご説明してきました。
ツミレバはレバレッジのかかった積立投資であり、レバレッジのない積立に比べて少額でも利益を得やすかったり、短期間でも資産を増やす可能性があるなどのメリットがあります。
しかし同時に、市場の影響を受けやすく、投資対象の指数が下落したり保ち合うような局面では大きく資産を減らす危険性がありますね。
インターネット上ではツミレバを推奨する声も多いですが、リスクの高い金融商品であるという認識は必要です。行う際は十分に危険性を把握した上で、無理のない投資計画を立てる必要があるでしょう。