今回は日本の税制の1つである「損失繰越」について説明していきます。
損失繰越を活用すれば、FXの取引において税金対策を行うことができ、本来支払うべき税金を抑えることが可能です。
しかし損失繰越は海外FX業者では使うことができません。
それでも海外FXは他の方法で税金を抑えることが可能です。
そこで今回は、海外FXで損失繰越が使えない理由と、税金対策の方法について徹底解説していきます。
海外FXの税金や損失繰越についての正しい知識を一緒に身につけていきましょう。
損失繰越の仕組みとは!?海外FXの税金の仕組みは違う
海外FXでは損失繰越が使えない一方で、国内FXでは損失繰越を使うことが可能です。
そもそも同じFXであっても、海外FXと国内FXでは税金の仕組みが異なります。
- 国内FX業者 ⇒ 申告分離課税
- 海外FX業者 ⇒ 総合課税
まず国内FXでは、どれだけ利益を稼いでも税率は一定の20.315%(所得税・住民税・復興特別所得税)の申告分離課税が適用されます。
一方で、海外FXは給与や不動産収入など他の所得と合算される総合課税が適用され、税率は一定ではなく所得に応じて変化していきます。
- 海外FXの含み益は課税されない
- 海外FXのボーナス分は課税されない
- 利益は「雑所得」として損益通算できる
- 累進課税が採用される
- 住民税はおおむね10%前後
では本題に入り、損失繰越について説明していきます。
損失繰越とは「ある年に損失が出た場合に、その損失を翌年以降で3年間繰り越すことができる仕組み」です。
例を使って説明していきます。
たとえば2016年に国内FXで500万円の損失を出したとします。この年は利益はなく500万円の損失だけのため納税額は0円です。
ここで2016年に発生した損失を3年間繰り越す「損失繰越」を翌年から適用させます。
そして翌年2017年は国内FXで100万円の利益を出すことができました。
この際、前年に発生した500万円の損失を損失繰越によって、この年の利益100万円を相殺します。
つまり2017年は利益を100万円得ましたが、損失繰越によって納税額が0円となります。
ただし上記の画像のように、損失繰越は損失が発生した翌年以降3年が期限ということに注意しましょう。
今回の例でいえば、2019年までに損失控除しない場合は、翌年の2020年には損失繰越が適用されないということですね。
ところがこの損失繰越は海外FXでは利用できません。
つまり海外FX業者を利用し、上記の画像のように2016年に500万円の損失が発生しても、その損失は翌年以降に繰り越しされず利益を得た年ごとに課税されていきます。
損失繰越は国内FX業者の利用者であれば、確定申告により誰でも活用できますが、海外FX業者の場合は活用できないことに注意しましょう。
海外FXでの確定申告の書き方・やり方について知りたい方は、次の記事もあわせてご覧ください。
関連:海外FX確定申告の書き方・やり方と必要書類を解説【2024年最新版】
海外FXと国内FXは税率も全く違う
海外FXと国内FXは損失繰越だけではなく、税率も異なります。
海外FX業者を利用し利益を得た場合、以下のように利益(所得金額)によって税率が異なる累進課税制度が採用されます。
引用元:国税庁 所得税の税率
上記の表を確認いただくと、
FXの利益が6,949,000円までの時
→海外FX業者
FXの利益が6,950,000円超の時
→国内FX業者
を利用した方が税率を抑え、結果として納める税金も少なくなります。
ただし海外FX業者を利用した場合は、給与所得や不動産所得などと合算される総合課税が適用されます。
他の所得の状況により、国内FXの税率である20.315%を超える場合もありますので注意しましょう。
不利な税金の仕組みでも節税はできる!
海外FX業者を利用する場合は、
- 損失繰越が使えない
- 695万円超の利益を得た時の税率が高い
という点で税金においては国内FX業者に比べて不利な点が多いです。
しかし海外FX業者を利用している場合でも、様々な方法で税金対策を行うことができます。
たとえば以下のような方法です。
- 経費を増やす
- 所得控除を増やす
- 外国へ移住し日本の非居住者になる
- 法人化して海外FXを行う
- 両建てを使い節税する
この中には海外FXならではの税金対策もあります。
場合によっては、多くの利益を出している時でも海外FXの方が税金が少なくて済むことも。
詳しくは別ページで書いていますので、興味がある方はご覧ください。
関連:海外FXの税金対策・節税方法まとめ!簡単にできる7つの対策
経費や所得控除を増やすなどの税金対策を行えば手元に残るお金を増やすこともできるため、ルールの範囲内で実践してみましょう。
大きな値動きによる損失にはゼロカットの方が有効!
損失繰越はある年に損失を出した場合、翌年以降3年間に渡り利益を控除できるため、国内FXを利用する際はぜひ活用したい仕組みです。
しかし前述した通り、海外FXでは損失繰越が活用できません。
そこで管理人が海外FX業者を利用する上でおすすめしたい方法が、ゼロカットという仕組みです。
FXでは為替の急激な動きにより、口座残高がマイナスになってしまう場合があります。
実はこのような場合、海外FX業者と国内FX業者で対応が大きく異なります。
海外FX業者
→マイナスの口座残高を業者が負担
国内FX業者
→マイナスの口座残高をトレーダー本人が負担
つまり海外FX業者を利用すると、為替の急な変動により口座残高がマイナスになってしまっても、その損失を業者が負担してくれるためリスクを最小限に抑えることが可能です。
国内FX業者ではゼロカットという仕組みがなく、口座残高がマイナスになった場合はトレーダーが負担しなければなりません。
仮に損失繰越を活用し、翌年以降の税金が控除されたとしても、損失金額の全てが返ってくるわけではないのです。
特に高いレバレッジで取引し、大きな損失になった場合は借金を背負うこともあります。
このようになってしまえば、次の年以降の税金が抑えられたとしても意味はないでしょう。
実際に2015年に起きたスイスフランショックでは、国内FX業者を利用している多くのトレーダーが借金に苦しめられました。
つまり利益を出せず借金を抱えてしまうリスクを考えるならば、損失繰越を使うよりもゼロカットのある海外FX業者を利用したほうが、より大きなリスクに備えられるといえるでしょう。
海外FXの損失繰越まとめ
損失繰越とは「損失が出た場合にその損失を翌年以降3年間に渡り繰り越す仕組み」でした。
また海外FX業者は損失繰越ができないだけではなく、「695万円超の利益が出た場合、税率が国内FX業者を利用した時よりも税率が高くなる」というデメリットもありました。
このような税金に関するデメリットがある海外FXですが、
- 経費を増やす
- 所得控除を増やす
- 外国へ移住し、日本の非居住者になる
- 法人化して海外FXを行う
- 両建てを使い節税する
という税金対策が存在しますので、海外FX業者を利用する場合は試してみてください。
また損失繰越を利用する場合は、必ず確定申告を行わなければなりません。国内FX業者を利用し、損失が発生した場合でも確定申告を行うようにしましょう。
なお最後に紹介したゼロカットの仕組みが良い例ですが、国内FX業者と海外FX業者では税金以外にも様々な違いがあります。
損失繰越や税率の違いというのは、FXで大きな利益が出てから必要となってくるものです。
FX初心者のうちは税金を気にするのではなく、リスクの小ささや利益の上げやすさを重視してFX業者を決めることをおすすめします。
それぞれの特徴を踏まえつつ、まだFX取引に自信がなく損失を発生させる可能性が頻繁にある場合は繰越控除の使える国内FXを選択。そして、ある程度FX取引で安定た収入を得られるようになったら、海外FX口座を開設し、記事中に紹介している海外FXにおける5つの税金対策を活用するなど使い分けてみてはいかがでしょう。