
2017年1月、とある会社が貸金業法違反の罪で逮捕されました。
逮捕された業者はファクタリング会社を装い売掛債権を担保に、貸金業無登録であるにも関わらず、高金利で貸し付けを行っていました。
このニュース以後、ファクタリング(債権の売却・買取)自体が違法であるかのような噂が出回ってしまいました。
しかし債権の売却・買取自体は合法の資金調達手段です。
本記事ではファクタリングの合法性を解説。違法業者を見分けるポイントや、違法である給与ファクタリングについても解説します。
目次
ファクタリングは違法ではない
合法な資金調達手段であるファクタリングについて解説します。
債権譲渡による資金調達サービス
ファクタリングは、債権譲渡による資金調達サービスとして広く普及しています。
利用者は、支払期日前の売掛債権(請求書)をファクタリング業者に売却することで、手数料を引いた金額をスピーディーに資金調達できます。
ファクタリング業者は支払期日前の売掛債権を即現金化し、未回収リスクを負うことで手数料によって利益を得ることができます。
ファクタリング業者は独立系の他、大手金融機関のグループ会社も運営する合法の金融系サービスの1つです。
2社間取引と3社間取引
ファクタリングには2社間取引と3社間取引があり、それぞれ以下の特徴があります。
- 2社間ファクタリング:利用者(社)とファクタリング会社で契約する
メリット:資金化が早い、取引先に知られない
デメリット:3社間より手数料が高い - 3社間ファクタリング:利用者(社)とファクタリング会社、売掛先で契約する
メリット:2社間より手数料が安い
デメリット:資金化まで時間がかかる、取引先に知られる
資金調達までのスピードと取引先に通知されないメリットから、一般的に利用されているのは2社間ファクタリングです。
法的根拠
ファクタリングは売掛債権の売却によって資金調達をすることができます。
違法かどうかはこの「売掛債権の売却」に法的な根拠があるかで判断されることになります。
その根拠は遡ること1998年、「債権譲渡登記制度」の成立にあります。
債権譲渡登記とは、法務局の登記簿に債権が譲渡されたと記録(登記)することです。
この登記により「債権が譲渡されたことを法的に証明」できるようになりました。
民法第467条:指名債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
また、2005年には「債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律の一部を改正する法律」が成立し、国はファクタリングを奨めていることがわかります。
参考:債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律の一部を改正する法律
貸金業法で守られていない
ファクタリングは違法ではないものの、貸金業法では守られていません。
そもそも貸金業法とは、貸金業を営む業者を取り締まるための法律です。
その中で「金銭の貸付け又は金銭の貸借の媒介(手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法)」は貸金と定義されていますが、ファクタリングは「貸金業」に含まれないのです。
また、貸金業では利息制限法という法律によって利息の上限が以下のように決められています。
元本が100,000円以上1,000,000円未満の場合 年1割8分(18%)
元本が1,000,000円以上の場合 年1割5分(15%)
仮に、あるファクタリング契約で手数料が20%を超えていても、ファクタリング業者は「貸金業者」ではないため、違法でないということです。
ここで問題点になるのが手数料が20%を超えることがある2社間ファクタリングです。
3社間ファクタリングに比べれば手数料の高い2社間ファクタリングは、取引先への通知がないことから、経営者にとっては利用しやすいファクタリングサービス。
しかし、ファクタリング業者にしてみれば万一取引先が倒産にでもなれば、損をしてしまいますから、どうしても手数料は高くなってしまうわけです。
2社間ファクタリングでも優良な業者はありますが、このような状況から「2社間ファクタリングを取り扱うファクタリング業者は悪徳業者だ、ヤミ金だ」といわれることもあります」。
違法なファクタリング業者を見分けるポイント
違法なファクタリング業者を見分けるポイントを解説します。
- 「償還請求権なし」で契約できない
- 金利を設定している
- 手数料が高すぎる
- 企業概要に不備がある
- 契約書内容に不備がある
- オフィスでの面談が不可
- 見積りに不明瞭な箇所がある
- 担保を要求される
- 手数料が安すぎる
「償還請求権なし」で契約できない
ファクタリングを利用する際に「償還請求権なし」で契約できない場合、違法なファクタリング業者である可能性が高いといえます。
償還請求権(遡及権)とは、売掛先の倒産等で売掛金が未回収の際、ファクタリング会社が利用企業から費用を回収する権利です。
ファクタリングを活用する企業にとって、償還請求権なしの契約の場合、売掛先が経営破綻してもその損失をファクタリング会社に補填する責任が発生しません。
償還請求権なしの契約は、「ノンリコース契約」とも呼ばれています。
金利を設定している
契約の際に金利を設定してくるファクタリング会社は違法といえます。
ファクタリングは債権の売却による資金調達方法です。
そのため、売却手数料はかかりますが金利はかかりません。
ファクタリングにおいて金利を設定してくる業者は違法なファクタリング会社である可能性が極めて高いといえます。
手数料が高すぎる
ファクタリングにかかる手数料が高すぎる場合、違法なファクタリング会社である可能性が高いといえます。
ファクタリング取引には2社間と3社間の2種類があり、手数料相場は以下の通りです。
- 2社間ファクタリング:買取価格の10%~20%
- 3社間ファクタリング:買取価格の1%~10%
手数料率はファクタリング会社によってさまざまに設定されています。
取引先の信用度によって変動するので一概にはいえませんが以上の範囲に収まっていれば悪徳業者ではない可能性が高いです。
手数料が心配であれば一律の手数料を設定ているファクタリング会社や、手数料条件を設定しているファクタリング会社を選ぶのも1つの方法でしょう。
企業概要に不備がある
ファクタリング会社を選ぶ際に、最初に見ておかなければならないのは、会社概要です。
ここでは参考として大手のみずほファクターを例に見てみましょう。
みずほファクターのホームページには、
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- 企業名称
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- 代表者名
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- 所在地
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- 電話番号
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- 設立年月日
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- 資本金
-
- 役員名
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- 従業員数
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- 業務内容
が記載されています。
ちなみに、ある小規模なファクタリング会社の会社概要にはサイトの運営者名、代表者名、そして問い合わせ番号しか記載されていませんでした。
大きい会社だから優良、小さいから悪徳業者というわけではありませんが、あまりにも情報が少ないファクタリング会社は注意しましょう。
契約書内容に不備がある
優良なファクタリング会社ほど、契約で必要になる書類が多くなる傾向にあります。以下は一例です。
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- 商業登記簿謄本
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- 印鑑証明書
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- 決算書の写し
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- 売掛先との契約書
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- 取引内容を記載した書類
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- 納税証明書
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- 代表者の本人確認書類
ただし請求書と通帳のコピー、身分証明書の3点のみでファクタリングを利用できる優良業者もあります。
「請求書のみ」でファクタリングを利用できる場合は違法なファクタリング会社である可能性が高いので注意しましょう。
オフィスでの面談が不可
大手の優良ファクタリング会社の中には、「面談なし」「契約書の郵送のみ」といったサービスを打ち出している会社もあります。
しかし、それは大手だからこそであって、通常はファクタリング会社で面談をするのが一般的です。
面談が必要とされるのは、ファクタリング会社が顧客企業の実在や信頼性を確かめるため。
ファクタリングを利用する場合は、サイトに掲載されている住所なのかどうかといった確認も兼ねて、オフィスで面談が可能かどうかを聞いてみるのが良いでしょう。
ただし近年では面談をオンラインにしている企業や、面談自体を設けていないファクタリング会社もありますので、参考程度に留めてください。
見積りに不明瞭な箇所がある
債権を譲渡するのに、手数料の見積もりがなかなか出ない、不明瞭だという会社は疑ってかかるべきです。
優良なファクタリング会社なら、譲り受ける債権の金額や企業の規模によってあらかじめ細かく手数料が設定されているはずです。
あいまいな手数料を出してくる、異常に時間がかかるといったファクタリング会社には注意しましょう。
担保を要求される
そもそもファクタリングとは担保を必要としない取引です。
融資ではなく債権を譲渡しますので、担保が必要となることは絶対にありません。
先述した逮捕された業者は、売掛金を担保に法外な金利で融資を行っていました。契約の話の中で「担保」という言葉が出たら要注意です。
手数料が安すぎる
ファクタリング会社や契約によっては、事務手数料や印紙代、債権譲渡登記費用などがかかることがあります。
悪徳業者は、最初に安い手数料で契約しておき、後になってから契約にないこれらの手数料をあとから請求することも少なくありません。
安すぎる手数料は疑ってかかりましょう。また、ファクタリングを初めて利用するなら、いくつかのファクタリング会社の手数料を比較してから利用しましょう。
比較することで手数料の相場がわかりますし、そのファクタリング会社がどのようなものか判断する基準になるでしょう。
給与ファクタリングは違法
「ファクタリングは違法ではない」という話が出ると「給与ファクタリングはどうなんだ」と反論する方もがいますが、給与ファクタリングはそもそもファクタリングではありません。
給与ファクタリングは給料を債権とみなし、給料日前に買取ることで資金化する違法行為です。
給与ファクタリングについて金融庁は次のように注意喚起を行なっています。
「給与ファクタリング」などと称して、業として、個人(労働者)が使用者に対して有する賃金債権を買い取って金銭を交付し、当該個人を通じて当該債権に係る資金の回収を行うことは、貸金業に該当します。
貸金業登録を受けていないヤミ金融業者により、年率換算すると数百~千数百%になる手数料を支払わされたり、大声での恫喝や勤務先への連絡といった私生活の平穏を害するような悪質な取立ての被害を受けたりする危険性があります。また、高額な手数料を支払ってしまうと、本来受け取る賃金よりも少ない金額の金銭しか受け取れなくなるため、経済的生活がかえって悪化し、生活が破綻するおそれがあります。
ヤミ金融業者を絶対に利用しないでください
参考:金融庁|ファクタリングに関する注意喚起
違法なファクタリング業者と同様、このような会社はファクタリングと称し貸金業に無登録で貸付を行っているのです。勤務先に取り立てに来るなど、悪質さが際立ちます。
給与ファクタリングを取り扱う業者は悪徳業者と判断できますので、絶対に利用しないようにしましょう。
違法なファクタリングに関するよくある質問
違法なファクタリングに関するよくある質問と回答を紹介します。
違法ファクタリングの判例や逮捕例を教えてください
2016年9月、関西のある会社の会長が売掛金の回収が進まず資金繰りに窮していました。
そして東京都内のファクタリング会社から勧誘を受け、約320万円の売掛債権を譲渡し、20万円を借り入れます。しかし、ファクタリング会社は債権の購入代金を支払わず、債権は会長側に戻りました。
府警は、ファクタリング会社らの一連の取引を「債権を担保にした無登録での違法な貸し付け行為」と判断し14人を逮捕しました。府警によると、ファクタリングを偽装したヤミ金融の逮捕はこの時点では初めてだったということです。
他に裁判例などを知りたい場合は、判例検索サイトの利用がおすすめです。
参考:裁判例検索 | 裁判所 - Courts in Japan
違法ファクタリングは弁護士に相談できますか
弁護士事務所によってはファクタリングトラブルに対応しています。ファクタリングトラブルに対応していても、給与ファクタリングのトラブルに対応していない弁護士事務所もありますので、事前に確認しましょう。
違法なファクタリング業者を避け安全な資金調達を
本記事ではファクタリングの合法性やその根拠、違法なファクタリング会社を見分けるポイントを解説。給与ファクタリングの違法性についても言及しました。
ファクタリングは決して違法ではありませんが、利用する企業の足元を見たり、担保を出すよう求めたりする悪徳業者がいることも事実です。
ファクタリングは資金繰りに悩む経営者にとって非常に頼りになる資金調達方法ですので、利用する際は悪徳業者かどうかを見極める目を持ち利用しましょう。
また給与ファクタリングは、その仕組みから現在はすべて違法業者であるといえます。金融庁が給与ファクタリングは貸金行為に該当するとの見解を示したからです。
貸金は債権譲渡ではないため、手数料ではなく金利が発生します。そのため給与ファクタリングはファクタリング(債権譲渡)とは呼べないのです。